明日は10月31日!つ、ま、り、・・・十次の誕生日!!
しかも、私達が付き合って、初めて迎える誕生日。
幼馴染だけあって、これまで十次のことを祝わなかった年はない。
だからこそ!今年はいつもとは違う趣向を凝らさなければ!
・・・と意気込みつつ。今私が準備しているのは、手作りケーキ。
ええ、ベタですとも!でも、今まで手作りの物は渡したことがない。
・・・・・・もしかしたら、小さい頃に折り紙とかはあげてるかもしれないけど。そんなのは“手作り”に入らない!
というわけで、今日は張り切ってケーキを作りますっ!
お母さんにもキッチンを貸してね、と言っておいた。もちろん、十次とのことも話してある。
・・・こういう時、幼馴染だと受け入れられるのが早くて有り難いけれど、恥ずかしさは倍増になる気がする・・・。
と、とにかく。頑張って作るぞ〜!
「え〜っと・・・・・・?」
レシピを見ながら、材料を量っていく。
・・・これまたベタだけど、材料を混ぜる時は、愛情を込めないとね。
十次に幸せが訪れますように・・・・・・っと。
――翌朝。
上手く出来たケーキを、ラッピングした箱に入れ、早めに十次の家へ向かう。
「おはよう!」
「おはよう。・・・が先に来るなんて、珍しいじゃないか。」
「今日はこれを渡そうと思って・・・・・・お誕生日おめでとう!」
「ああ・・・。ありがとう。」
一応、十次は嬉しそうに受け取ってくれたように見える。
少しは喜んでもらえたかな!
「ケーキだから、冷蔵庫に入れておいて。」
「わかった。帰ってからいただくことにする。」
「うん!」
私がそう返すと、十次は一旦家へ戻った。
そして、あらためて、朝練に向かう。
「さっきの・・・・・・ケーキなんだよな?」
「ん?うん、そうだけど・・・何かマズイことでもあった・・・!?」
「そうじゃない。重みがあったから、結構な物を作ったのかと思っただけだ。」
「あ、そういうことか・・・。まぁ、たしかに、一人では食べられないと思うし、残りそうだったら、うちに持って来てくれてもいいよ。」
「・・・・・・それなら、最初から小さ目の物を作れば良かったんじゃないか?」
「いや〜、気合が入っちゃって。」
「たしかに今年は気合が入ってるみたいだったな。俺の記憶では、今まで手作りの物を貰ったことは無い気が・・・・・・。」
「そりゃ、まぁ、今年はね。」
「?」
何気なくプレゼントについて喋っていると、そんな話になった。
でも、十次はピンと来ていないらしい。
・・・・・・まぁ、そうだろうなとは思ってたけど。私ばっかりが意識してたみたいで、ちょっとだけ寂しい。
「だって・・・・・・ほら。今年は、付き合って初めての誕生日だから。」
「そ、そうか・・・。」
私も顔が赤くなってるだろうけど。十次も照れくさそうに少し顔を逸らした。
全く意識してない、ってわけでもないのかな・・・・・・?
「そういうの、迷惑だった?」
「いや。・・・・・・がそんなことを考えてくれていたのは、素直に・・・嬉しい。」
ほんの少し不安になって、一応確認してみたら、そんな返答がかえってきた。
「そっか!」
思わず笑顔になって、今日はそのテンションのまま、上機嫌で朝練をこなした。
朝練を終えて、教室に入っても、それは変わらなかった。
・・・・・・今日は一日、機嫌が良いかもね。
そう思いながら、いつも通り、仲の良いに挨拶をしようとしたら。
「とりっくおあとりいと!」
「おはよ・・・って、え??」
の予想外の言葉にポカンとしてしまう。
「ほら、今日は何月何日よ?」
「10月31日。」
「ということは、何の日?」
「十次の誕生日。」
「あー・・・。」
は私の答えを聞くと、しきりに頷いている。
・・・・・・も十次の誕生日、知ってるんだっけ?
「それは仕方ない。」
「ん?どういう意味?」
「まぁ、いいや。・・・はい、これ。にあげる。」
「え・・・・・・?」
がクッキーの入った袋を渡してくれた。
・・・私に?
いや、もしかして・・・!?
「まさか、十次に??」
「なんでそうなる。に、って言ったじゃない。」
「だって、私が貰う理由なんて・・・・・・。」
「もう・・・・・・。」
呆れたように、苦笑混じりにはため息を吐いた。
「今日は世間的には、ハロウィンの日です。だから、そのお菓子をにあげます。」
「あ・・・・・・。」
そういえば。最近、街中がハロウィン仕様になっていた。でも、それが今日だなんて思っていなかった。
だって、今日は十次の誕生日で、しかも、付き合って初めての誕生日で・・・・・・そればっかり考えていた。
・・・でも、十次の誕生日はハロウィンと同じ日だ、なんて話も今までだってしたことあったのに。
そんなことを忘れてしまうぐらい、今日の私は浮かれてたんだ・・・・・・。
「ご、ごめん!明日、お返し持って来るっ!!」
「いいよ。・・・と言うか、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、なんだから、イタズラしちゃおうかな〜?」
「えぇー!?」
「思い付いたらイタズラするから、楽しみにしてて!」
「無理に考えなくていいって・・・!!」
・・・というやり取りをした朝。
結局、放課後まで何も無くて、私も忘れかけてた頃。
「!イタズラ思い付いたから、部活行く前にちょっと時間ちょーだいっ!」
と楽しそうに、に声をかけられた。
「えーっと・・・でも、早く部活に行かないと・・・。」
「大丈夫っ。室町君が迎えに来る頃には終わるから。」
「そ、そう・・・・・・。」
「じゃあ、こっち向いて、椅子に座って?」
のいる窓側の方に横を向いた状態で椅子に座らせられる。
「それから、この辺りを見て・・・・・・。」
が自分の首辺りに拳を作った。
言われた通り、少しだけ顔を上げて、の手を見る。
「で、目を閉じて・・・・・・。」
「目、閉じるの・・・っ?!」
「大丈夫、怖いことはしないから。私が『いい』って言うまで開けちゃダメだからね!」
「う、うん・・・・・・。」
恐る恐る目を閉じる。
「ちょっと両肩に手を置くけど、驚かないでね?」
「・・・本当に、の手、なんだよね・・・・・・?」
「変な物置いたりしないってば。」
「・・・わかった。」
不安に思っていると、すぐに両肩にちょっとした重みを感じた。
・・・たぶん、これは人の手だと思う。の言う通り、変な物ではなさそう。
「もうちょっとだけ、我慢しててね?」
「うん・・・・・・。」
正面からの声が聞こえる、ということは、他の人の手、ということでもなさそう。
・・・一体、どんなイタズラなんだろう・・・・・・。
そう思っていると、少し荒い足音が後ろから聞こえてきた。
「さん!?一体、何を・・・・・・!?」
「えっ!?十次?」
「あー、もう。まだ『いい』って言ってないのに。」
「あ・・・ごめん。」
十次の声が聞こえ、思わず目を開けてしまった。
「まぁ、でも、私の目的は完了したからいいよ。それじゃあ、二人とも部活頑張ってきてね!」
はそう言うと、早々と教室を出て行った。
・・・・・・結局、どんなイタズラだったんだろ?目を閉じてたから、が何してたか、わからないし・・・。
まさか、顔に落書き・・・はないか。の手は、私の肩にあったわけだし。さすがに、目を閉じてても、顔に落書きされたらわかるだろうし。
う〜ん・・・・・・。
「ねぇ、十次。私かこの周りで、何か変わったとこ、ある?」
「・・・・・・。」
十次はまじまじと私の顔を見る。・・・と言うか、見すぎ??
や、やっぱり顔に落書き?!!
「え、何?!何か書いてある??」
「かいて・・・・・・?」
十次は、意味がわからない、という顔をしている。・・・ということは、落書きは無いんだ・・・。
一安心している私とは対照的に、十次はまだ訝しげに私の顔を見ている。
「・・・どうかした?」
「・・・・・・・さっき、さんと何をしてたんだ・・・?」
「それ、私が聞きたいぐらいだよ・・・。」
またしても、理解不能と言いたげな十次に、私は今日の出来事を話した。
「――でも、どんなイタズラしてたのか、わからなくて・・・・・・。十次からはが何してるように見えた?」
「・・・・・・・・・・・・。」
私が聞くと、十次はさっと顔を逸らした。
・・・・・・さっきまでは、不思議そうに私の顔を見てたのに、突然どうしたんだろ?
「十次?」
「・・・・・・とにかく、部活に行きながら話そう。」
「あ、うん。そうだね。」
教室を出てテニスコートに向かうけど、どうも十次は話しにくそうにしている。
「あの・・・・・・十次?さっきの話だけど・・・。」
「ああ、うん・・・。」
「、何か変なことしてたの?」
「・・・・・・その・・・。」
「うん・・・。」
「廊下を歩いてて、の方に行こうとしたら、さんがこっちに手を振っていて・・・。」
「へぇー、そうなんだ。」
、そんなことしてたんだ。
でも、これだけなら、まだイタズラじゃない。
「俺が教室に入ろうとしたら・・・・・・さんが、の肩を持って、顔を近づけたから・・・・・・。」
「うん、それで?」
「・・・・・・・・・・・・こっちからは・・・キス、してるように見えた。」
「えぇぇぇぇぇっ!???????」
あまりに驚いて、かなり大きな声を出してしまった。
十次も、自分で言った言葉に照れているのか、少し俯き気味だ。
「・・・って、大声出して、ごめん・・・。」
「いや・・・・・・。」
「えっと・・・・・・と、とにかく!それは誤解だからっ!実際、何もされてないから!」
「・・・わかってる。」
真実はわかってくれているようだけど、十次はやっぱり「キス」という言葉に動揺しているみたい。
と言うか、私も恥ずかしい・・・!!!
でも、十次はそれを阻止しようと、駆けつけてくれたんだよね。
そう思うと・・・・・・やっぱり嬉しいかな。
・・・・・・むしろ、せっかくの誕生日だったんだから、私が十次に・・・いや、それはない!!恥ずかしすぎる!!!
とかいろいろ考えてしまって、その後はどことなく気まずい一日になってしまった・・・。
、これがイタズラだったのね・・・!?(前回蔑ろにされた仕返し、って意味もあるかな♪ By.)
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ずっと書こうと思ってたんですけど、前作と書き方が違いすぎて、戸惑っていたネタです(苦笑)。
結局、前の雰囲気も意識しつつ、今の書き方に近い感じでやりました。
あと、何より、室町くんの口調がわからん・・・!!(泣)
何はともあれ、とりあえず完成できて良かったです・・・!(苦笑)
あらためまして・・・室町くん、お誕生日おめでとう!
('13/10/31)